状態空間モデルは、非線形な時系列データを含む幅広いタイプの時系列データを、統一的に扱えるとても便利な解析手法です。
しかし、いざ学び始めると状態やシステム、カルマンフィルター、MCMC....などと言った初学者にはとっつきにくい用語が並び、実務応用までたどり着く前に疲弊してしまいます。(私のように.....)
今回はそんな状態空間モデルを、概略から詳細理論、実務応用までステップバイステップで学べるような3冊の書籍を紹介します。
時系列解析全般のおすすめ書籍はこちらをご参照ください。
Step1:時系列分析と状態空間モデルの基礎: RとStanで学ぶ理論と実装
まずは、状態空間モデル概略を学ぶためにおすすめなこちらの書籍です。状態空間モデルを直感的に理解するにはこの書籍が一番わかりやすいでしょう。多くのサイト様でも紹介されており、著者の方が運営するサイトでも大枠は書かれていますが、本書ではさらに分かりやすく、詳細な内容になっています。状態空間モデルだけでなく基本的なARIMAモデルなどから順をおって書かれているので、これ一冊で時系列解析の大枠と実践法は網羅できるはず。
本書の特徴は何といっても、ユーモアのある具体例と数式を極限まで使わない解説にあります。理解のしやすさを重視し、なんと数式での説明と数式の意味を日本語に置き換えての説明での両方で書かれているのが印象的でした。
とりあえず実務で使えるようになりたい、難しいことはわからないけど状態空間モデルを教えてください。という方には是非ともおすすめいたします!

時系列分析と状態空間モデルの基礎: RとStanで学ぶ理論と実装
- 作者: 馬場真哉
- 出版社/メーカー: プレアデス出版
- 発売日: 2018/02/14
- メディア: 単行本
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著者の運営サイト Logics of Blue | 統計分析や統計的予測・意思決定理論など
Step2:基礎からわかる時系列分析 ―Rで実践するカルマンフィルタ・MCMC・粒子フィルター
こちらはさらに踏み込んだ内容になっています。私が特に感動したのは、その内容の濃密さです。背景理論の導出や、Rを使った実践応用におけるツールの使い方、結果の解釈法など、丁寧すぎる解説は他の書籍と比べて一線を画しています。後半では、StanやRパッケージを使ったかなり応用的なモデルまで扱いますので、この一冊があれば大抵の時系列データは扱えるようになるかと思います。
また、本書ではベイズの立場をとっており、ベイズ統計の参考書としても使えます。
こちらも古典的な時系列解析手法から順番に解説されていますので、より詳細かつ具体的に学びたい方はこの書籍から読み始めるのもよいかもしれません!Rを使わない人でも十分に読む価値はあります。

基礎からわかる時系列分析 ―Rで実践するカルマンフィルタ・MCMC・粒子フィルター (Data Science Library)
- 作者: 萩原淳一郎,瓜生真也,牧山幸史,石田基広
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2018/03/23
- メディア: 大型本
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Step3:Rによるベイジアン動的線形モデル (統計ライブラリー)
こちらはベイズ的な観点から状態空間モデルを捉えて説明された本です。タイトルは少しいかついですが、中身はわかりやすく具体的な数値を入れての計算もあるため、検算ができるのがいいですね。本ブログでもこの書籍をもとに記事を書かせて頂きました。こちらの書籍でもベイズの観点から状態空間モデル捉えており、応用範囲も広がるかと思います。
状態空間モデルは工学分野から発展したという背景もあり、制御工学の観点から解説がなされることが多いです。しかし、本書籍は線形モデルの背景から状態空間モデルの解説がなされているというのが特徴的です。
状態空間モデルは何となく理解したけど、何か他の使い方もできないのかな?と感じたら本書籍をおすすめします!

- 作者: G.ペトリス,S.ペトローネ,P.カンパニョーリ,和合肇,萩原淳一郎
- 出版社/メーカー: 朝倉書店
- 発売日: 2013/05/08
- メディア: 単行本
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まとめ
状態空間モデルは汎用的な概念だけあって、その解説方法も千差万別です。連休中に気になっていた書籍を読み漁り、その中でもわかりやすい!!と筆者が勝手に感じた書籍を紹介させて頂きました。その他におすすめな書籍等あれば教えて頂けると幸いです。(特にPython を使って解説された書籍はほとんどない印象です.....)
本記事が皆さまの学びのお役に立ちますように
※本記事は、筆者個人の感想です。